14
無機質な部屋だった。
会議室、という風情の部屋には、政府の担当官だと言う若い男が机についている。その後ろにはスーツを来た頑強な男性が4人、立っている。向かいに座るのは、審神者の少年。
革張りの重厚な椅子に埋もれるように、ちょこんと座している。些か
には大きすぎるその椅子に座ると、
の足が地面から浮く。それがまた
には不釣り合いであることを表しているようで、些か居心地が悪い。
の両の斜め後ろには、前田と鶴丸が直立して控えている。
「まさかこうして再びお目にかかれるとは思いませんでしたよ」
を前にして、政府の“担当官”だという男は開口一番、あけすけにそう言った。
まさかまた生きて会えるとは思わなかった、と。本人を目の前にして言うことか、と前田はその言い方に一瞬眉をひそめた。
「僕もです」
本来ならば怒っても良いところ、しかし
も平然とそれに応えた。
担当官は鼻で笑うかのように、ふ、と口角を上げて、「そうですか」とそれには何を言うでもなく、手元にある資料をめくった。
「では、早速始めます。まず、本丸の状況を確認させてください。今、本丸には何振りの刀剣男士が顕現していますか」
「…31振です」
「減ってはいないようですね。その内、何振りの手入れが済んでいますか」
「……15?か16?です」
「どちらですか」
「……えっと……」
「16振です」
審神者が首を傾げていると、斜め後ろに控えた前田が答えた。
「審神者にお答え頂きたいのですが……まあ良いでしょう。残りの刀剣はいつまでに手入れ出来そうですか」
「……分かりません」
「おおよその予測で結構ですが」
「…………、分かりません」
が正直に応えると、担当官は大きくため息をついた。
「刀剣男士の状態を把握出来ていないのですか」
「…出来てないです。まだ顔を会わせてない人もいるので」
「まだ全刀剣に面会すら出来ていない、と?」
「はい」
「それはどうしてですか?」
「前の審神者に酷いことされて、会いたくないって言ってる刀剣も居るらしいので」
「居る、らしい?」
「そう言ってた、って刀剣から聞きました」
そう言うと、担当は資料に落としていた目を審神者へと向けた。明らかに“呆れ”を含んだ険のある視線は、小さな審神者へと注がれる。
担当はまた一つため息をつくと、やれやれ、とでも言いたげに首を振った。
「……全く。貴方は審神者なのです。やりようはいくらでもあるはずです。もっとしっかりしてもらわないと」
「…はぁ………」
流石に前田もこれには言い返したくなって、眉間に皺を寄せた。
そもそも、何の知識もない少年を、大の大人でも対処の難しい本丸に禄なサポートも無しに放り込んでおいて、“もっとしっかりしてもらわないと”なんて、よくもまあいけしゃあしゃあと言えたものだ。
との付き合いが短い前田ですら、そう思った。
一期一振から話を聞く限り、この小さな審神者はここに至るまでに、並々ならぬ努力をして、なんとか命を繋いでここまで来ていた。
に言えば否定するかもしれないが、しかし事実、彼は相当な苦渋を舐めてきた。
刀剣男士に甚振られ、食料の限られた中で死を望み、飢えと寒さの中ひとり戦い抜いた結果、ほとんど奇跡的に、なんとかこうして今の状況にまで持ってくることが出来たのだ。
薬研や一期一振、こんのすけなどがこの場に居れば、嫌味の一つでも言い返していただろう。
けれど審神者の少年は、やはり無表情のまま、特に何を言い返すこともない。
「では、本丸での生活について伺います。食料や生活用品の発注は全てこんのすけが行っていて、審神者専用端末からの発注が無いようですが、使っていない理由は何ですか」
「……使い方が分からないので」
「操作方法はこんのすけに聞けば分かると思いますが」
「文字が、あんまり読めなくて。画面に書いてある言葉の意味が分からないです」
「…だから、操作出来ない?」
「そうです」
「………」
はぁ、とまたため息。
「これだから……」
首を振って、担当官がぽつりと小さな声でつぶやいた。
これだから。
概ね、貧民街の餓鬼はこれだから、とでも言いたいのだろう。担当官はその態度を隠そうともしなかった。
「一体この5ヶ月間、何をしていたんですか。全刀剣ともまだ会えてもいないし、文字すら読めずに本丸の運営も他に任せきり」
それ以外にも、担当官は小さな事柄を論えては、まったく何をしているのだ、とか、審神者なんだから、とか、これでよく審神者が務まるものだ、とまで言った。
それでもやはり、審神者は何も言い返さず、はあ、とか、そうですね、とか、のんびりとした相槌を打っている。
いい加減、見ている方がしびれを切らしそうだった。
「あのですねぇ、もう少し審神者としての自覚を持ってもらいたいもんです。遊びじゃないんですよ」
駄々をこねる子供に言い聞かせるような、心底呆れたような声音で、荒々しく手で机を何度も叩きながら担当官は言った。前田は、少しは反論しても流石に許されるだろうと思って審神者の少年を見る。
散々な言われようなのに、見える
の横顔は顔色一つ変わっていない。思う所があれど口を閉ざしているのか、本当に何も気にしていないだけなのか。
前田にはそれは測りかねたけれども、しかし
が何も言わないのならば自分が、と反論の一つでも口に登らせようとした、その時だった。
「聞き捨てならんな」
冷え切った声が、その場に静かに響いた。
はじめ、その声が誰のものだか、
には分からなかった。
聞いたことのない、少し低めの声。
担当官の後ろに立っているスーツの男の誰かかと
は思ったが、しかし担当官が驚いて目を向ける先を追って小さく視線をやれば、そこに居るのは、ここ最近では
にとっては見慣れてしまった白い刀剣だった。
「我が主殿は、我々刀剣のためにその身を粉にして日夜努力しておいでだ。それを“もう少し自覚を持て”とは、状況を知ろうともして来なかった担当官が聞いて呆れる。禄な助力の体制も整えずに、幼な子を瘴気蔓延る本丸に放り込んでおいて、よくそのような事が言えたものだ。そこまで言うのならば、是非ともまずは、その身で以って手本を見せてもらいたいものだな」
冴え冴えとした冷気を持った瞳が、担当官をひたと睨みつけた。
我慢ならない、そう思っていたのはどうやら前田だけでは無かったようだ。本来の鶴丸とは全く似ても似つかないほど表情を削ぎ落とした白皙の平安刀は、しかしこれまでの沈黙を破って、担当官へと鋭い切込みを入れた。
今まで
の前で口を開くことはなかったというのに、余程腹に据えかねたと見える。鶴丸の方を見ていない前田にも、息を呑むような殺気が地を張って広がり、部屋の気温を下げているような錯覚を覚えるほどだった。
睨みつけられた担当官は、たまったものではないだろう。担当官は無意識だろう、ごくりと唾を嚥下して、少し悔しげに口を引き結んで言葉を飲み込んだ。
「ま、まあ良いでしょう……。では、次です」
そう言って、無理矢理に鶴丸から視線を逸した。
以降の質問でも
は答えられないことが多く、前田が代わりに応える場面が多々あった。が、これまでのようなあからさまな嫌味は身を潜めたように見えた。鶴丸の牽制が効いたようだった。それでも棘のある言葉はふんだんに含まれていて、担当官の言葉は実に憎々しげだった。
鶴丸はそれ以降は口を出すこともなく、担当官も鶴丸の方に視線をやることは無かった。
一通り質問が終わると、「最後に一つ手続きが残っていますので、このままここで待っていてください」と担当官はスーツの男たちを伴って部屋を足音荒く出て行った。
3人、ぽつんと取り残されて、沈黙が落ちる。
面談以外に手続きがあるとは聞いていなかったが、何かまだ必要なことが残っているのだろうか。
そんな事を
は考えつつ、そう言えば、と鶴丸の方にちらりと目をやる。
「……あんた、喋れたんだ」
が顔を鶴丸の方に向けて問いかければ、白い刀剣はちらりと
の方を見て、それからふいと別の方へと視線をやった。
「……まあな」
なんで今まで喋らなかったのか。
そう思ったが、特にここで聞こうとは思わなかった。むしろ、彼が先程“主殿”と言ったことの方が気になった。
この刀剣とは特に何か関わりがあったような記憶もないのに、そういえば彼はそれなりに初期の方から
の側に居た。いずれ気軽に会話出来るようになったら聞いてみてもいいかもしれない、とも思う。
最も、そんな時が来るなんて想像も出来なかったけれど。
「手続き……。あんた、なんか聞いてる?」
しばらく経っても担当官が中々帰って来ないので、
は前田を振り返って尋ねた。前田も軽く首を傾げる。
「いえ、私は特に何も聞いてーーー」
前田は言いかけて、不自然に言葉を切った。
同時に、前田と鶴丸の二振りはぱっと部屋の隅へと視線を向けた。辺りにくまなく視線を滑らせながら、二振りは隙無く
のすぐ傍まで距離を縮める。そっと
を椅子から立ち上がらせて、共に部屋の隅へと静かに後退した。
「?どうしたの」
「主、ここから動くな」
鶴丸の少し緊張を孕んだ声に、その呼び方なに、と聞きたい気持ちをこらえて、
も隅から部屋の中を見回した。が、特に
には異変は感じられない。
しかし二振りは緊張を緩めることなく刀の柄に手を置いたかと思うと、躊躇う事なく抜刀した。
「前田、君はそっちだ」
「はい」
言い終わるか終わらないかの内に、バタン!と大きな音をさせて、2つの扉から同時に黒い何かが勢い良く跳び出してきた。間髪入れずに鶴丸と前田が応戦し、刃と刃がぶつかる金属音が会議室に響く。
黒い塊はちょうど2つ。大きいのと、小さいの。
先程担当官の後ろに居た者たちと似た黒いスーツ姿だったが、彼らとはまた別の人間のようだ。人の形をしたそれぞれが刀を持っていて、大きいのが鶴丸と、小さいのが前田と刃を交えて戦っている。
動くなと言われた
はその場にぼうっと立って、突如として始まった白刃戦を眺めていた。
なるほど、刀剣男士とはこうやって戦うんだなぁ、とか。
刀を持っているし、見たことのない顔だが、もしかして彼らも刀剣男士だろうか、とか。
僕を殺しに来たのかな、とか。
ここで死んでも、特別手当の対象になるかな、とか。
そんな事を考えながらしばらく火花散る応酬を見ていると、ふと、鶴丸と刃を交えている緑の髪の方と目が合った。おっとりとした中にどこか鋭さも持っていて、その口元がニヤリと笑んだ。
と、一人、敵が増えた。新手だ。
鶴丸の後ろから突如斬りかかってきた新手はすぐさま鶴丸と斬り結び、その隙を縫って緑髪の敵が一直線に
へと向かってきた。その刀はまっすぐに
を向いていて、これは楽に死ねそうだ、と
はその刀を見つめていた。
しかし、一瞬で新手を斬り伏せた鶴丸がすぐさま身を翻して、緑髪の敵に後ろから迫る。刀を振りかぶり、無駄のない動きで振り下ろされた。あのまま行けば緑髪の敵の首は綺麗に飛びそうだな、と見上げた矢先、
「そこまで!」
会議室に鋭い声が響いた。
前田の方を振り向けば、こちらもあと一歩の所で前田の刃が敵方の喉を掻き切ろうという所だった。
声の出処を
が視線で探してみると、会議室の入り口に見たことのない人間が立っていた。戦っていた敵とはまた別の人間のようだ。青い見慣れない服を着ていて、腰には長い刀を佩いているので、彼ももしかしたら刀剣男士かもしれない。
その男の放った声で、今までの激闘が嘘のように、それぞれ動きを止めて静止していた。
「ーーー刀を収めよ」
「………、どういうつもりだい、三日月」
「うむ。説明しよう。まずは刀を引け」
「そちらが引くのが先だ」
鶴丸が言うと、三日月がすっと手を上げた。それを合図に敵方はじりじりと数歩後退ると、臨戦態勢を崩して刀を収めた。
それをしっかりと見届けてから、しかし敵方を向いたまま警戒を怠ることなく鶴丸と前田は
の側まで戻って来てから、ようやくその刀を収めた。
「これはな、政府の行う試験のようなものさ」
「……?」
「……とんだ茶番に付き合わされたもんだぜ」
「まあそう言うな、鶴。前田も、すまなんだな。腕の一本でも飛ばすつもりで試せと言われておった。が、まあ見ての様さ」
腕の一本ならとは言うが、前田は頬に小さな傷があるくらいで、大きな怪我を負った様子はない。鶴丸に至っては、全くの無傷だった。
対して、敵方は服が破れて血が滲んでいたり、鶴丸が最初に斬り捨てた方は刀を持つ腕に大きな刀傷をこさえていた。
改めて辺りを見回すと、青い服の男以外はそれぞれ黒のスーツで統一されているが、刀を持っていてその扱いにも慣れている。よくよく見てみれば、前田と斬り合っていた小さい敵は前田と瓜二つで、髪型だけが違うようにも見えた。
緑髪の男は刀を収めて、全く肝が冷えるね、などと本当にそう思っているのか不思議に思うような口調で言う。刀を持つ腕を斬られた男は傷を見て、良い太刀筋だねぇ、なんてのんびり言っていて、さっきまでの緊迫感はそこにはもう無かった。
「手加減しておいて、よく言う」
「ふ、お見通しか」
三日月、と呼ばれた男は、穏やかに目元を細めた。それから足音一つさせずに
の近くまで足を進めた。
自然、前田と鶴丸が身構える。
「試験は終えた。何もせぬよ」
そう言ったものの、前田と鶴丸は鯉口に手を添えて警戒を解くことをしなかった。
それを見て、三日月は佩いていた刀を近くに居た緑髪の男に鞘ごと預けて、更に
の近くまで近寄ってから、
に目線を合わせるように膝を着く。
「すまなんだなぁ。怖い思いをさせてしまった。審神者とは言え、幼な子に経験させていいものではなかったな」
「……僕の事、殺さないの?」
が不思議そうにそう問うと、三日月はぱちり、と一つ瞬いて、それから少しの憂いをたたえて眉尻を下げた。
「殺さぬよ。これはな、刀剣達が主であるおぬしを守るかを試す、面談の一環なのだ」
「……政府は僕のこと、いらなくなったんじゃないの」
「違うさ。政府は審神者を大事と思うておる。もちろん、刀剣男士もな。そのための試験なのだ」
「……よく、分からない」
「そうか。よいよい。詳細は、結果と共に追って本丸に報告されるであろう。またそこで本丸の者達から説明をしてもらえば良い」
「…うん」
「本当はな、担当官がここで説明をするのだがな。鶴が殺気を飛ばしてあれを脅すものだから、すっかり縮み上がっておったぞ。顔を出すのは嫌だと言うておった」
「いい気味です」
これにはすかさず前田が応えて、三日月は前田を見て、そうか、と笑った。
「まあ、心配はいらぬよ。むしろ、こちらの対応に不備があって申し訳ないことをした」
「……なぜ君が謝るんだ」
「うむ。俺も一応、政府に属する者だからな。鶴の主殿の境遇を聞いて、思うこともあったのさ」
「ならば、もう少し誠意を見せて欲しいもんだな。あの担当官とやら、本丸を何だと思ってる」
「返す言葉もない。俺もいち刀剣だ、いか程も力は無いが、上に諫言してみよう」
「ああ」
三日月と鶴丸は、そんな会話をしていた。いち刀剣、ということはやはり、彼も刀剣男士らしい。
それも、どうやら二振りは面識があるのか、若干警戒はしているものの、会話の内容は随分と打ち解けた様子だった。
「さ、出口まで送ろう。面談はこれで全て終わりだ」
これも本当は担当官の仕事なのだがなぁ、と三日月はこぼしていたが、嫌がるような様子もなく、快く見送ってくれた。
「なんか……ごめん」
転送準備が整うのを待つ間、
がぽつりと言った。
それに少し驚いた風の前田と、いつもと変わらない無表情の鶴丸が振り返る。
「どうされましたか」
「………なんか……守ってもらった?から」
「いえ、当然の事をしたまでです」
「……じゃない」
「…え?」
「……当然、じゃ、ない」
は何か言おうと口を開けて、けれど閉じて、また開いて、そういうことを何度か繰り返して、やっと言葉を口にした。
「刀持って。戦って。……凄いこと、だし。僕なんか、別に死んだっていいのに。僕が審神者の仕事するとか言ったから、あんたらは僕を守らないと、いけなくて。自分を危険にしてまで、戦ってた、から。その……ごめん」
俯いてそう言う
を見て、前田は少し驚いていた。
彼は紆余曲折を経て、審神者の仕事をすることにした。けれど、本丸で本人が言っていたように、審神者の仕事をしているだけで、刀剣男士達の主になったわけではない、と考えている、らしい。
だから、審神者の仕事をしている、その理由だけで、刀剣が己の危険を顧みず戦って守ってくれているのが申し訳ないと、彼は謝る。
なるほど、彼は感情の起伏が少ないと思っていたけれど、それは決して感情がないわけではない。ただ、それを表に出すのがとてつもなく不得手なだけなのだ。けれど、彼はきちんと、周りのことを考えていて。
自分なんかのために、周りが危険を犯すのは申し訳ない、そんな風に思っていて。
前田は、そんな考え方の審神者を少し、好ましいと思った。
けれど、その考え方は少し間違っている。
「いいえ。主君を守ることが出来た、これは僕の誇りです」
「……誇り」
「ええ。これ以上の栄誉がありましょうか。僕は短刀です。人の側近くにあり、常に護身に用いられてきました。主君を守ることは、僕たちの誇りなのです」
「……、……あんた、いい人だね」
審神者の言いように、前田はふふ、と笑った。
彼は、決して驕ることがない。それどころか、些か己を下に見ることに慣れ過ぎている気もした。一方でそれは彼の良いところでもあり、また悪い所でもあるだろう。それでも言動の端々に、時折、周りへの思いやりや気遣いが顔を覗かせる。
少し不思議な人、一期一振がそう表現したのが少し、分かった気がした。
「君が審神者の仕事をするように、俺たちも俺たちの仕事をする。それだけだ。君が気にかけることは何も無い」
鶴丸は審神者の頭をぽんぽんと叩いて、いつもの無表情で、けれど柔らかい声でそう言った。
は盛んに目をぱちぱちとしばたかせた。
「………あんた達、変わってる」
「……君ほどじゃないな」
「そうですね」
二人が結託して言うのを見て、
は不思議なものを見る目で二振を見上げた。
本当に変わってる。
貧民街の餓鬼に対する周りの目なんて、先程の担当官のようなものがごくごく当たり前だ。当たり前だと思っていた。
それなのに、この本丸の刀剣達と来たら。
変わってるのが多い気がする。貧民街の、金も学も何も持っていない餓鬼に、そんなふうに言ってくれるなんて。
けれど、なんだか胸がすっと軽くなるような心持ちがして、少し暖かくなった気がした。
「………、…ありがと」
小さなその声は、けれどしっかりと2振りの刀剣には届いていた。
2018/10/07